2021/06/11

オリンピックの報奨金とドーピング問題~金(きん)と金(かね)

※このブログ記事の初出は2004/09/14で、その後に修正しています。


■金メダル返却

2004年9月、ドーピングで失格で金メダル剥奪が決まっハンガリーのハンマー投げ選手のアヌシュが、金メダルを返却することを決めたという。

室伏広治選手が繰り上がってもらうことになった金メダルは既に発送済みだというから、ちょっとタイミングが悪かった。


金メダルは絶対返さないと言い張っていた男が、どういう風の吹き回しかと思われるかもしれないが、いずれそうなるだろうと予測していた。

IOCによると、五輪で受けた2度の検査で提出した尿検体が別人のものだったという分析が出た以上、本人がどんなに潔白を主張しても、争っても敗北は目に見えているからだ。

これ以上の論争を避けて落ち着きを取り戻すために返還を決意したというが、そんなのは嘘だ。


■ドーピングする理由

なぜドーピングまでしてメダルが欲しいのかということを考えてみた場合、やっぱり邪推してしまうのは「金」だ。

ハンガリーでは、オリンピックでメダルを取ると、われわれからすれば大した額ではないにしても、35歳から一生涯の年金がもらえるという。

ハンガリーといえば旧東欧圏の中では経済的に恵まれた方だとはいっても、旧共産国だ。西欧諸国と比べると、まだまだ経済格差がある。


 私事だが、以前にチェコに友人がいて、その給料の安さに驚いたことがある。

ロシアあたりでは、欧米やアジアの男性と結婚したがっている女性が多いのも、要するに、そういう「お金」がらみの理由が大きいのだろう。


そういうことを考慮すれば、アヌシュたちがドーピングまでしてメダルを欲しがることも多少の同情の余地がないわけではないが、だからといってドーピングが許されるわけではない。


■報奨金の是非

報奨金を是非とするか否かの議論は、難しいものがある。

英国では、オリンピック精神に反するという理由で報奨金制度がない。

だが、オリンピックに出場するために失った金や時間は計り知れないものがあるだろうと思うと、複雑な心境だ。

たとえば日本の野球チームは銀メダルを取ったが、高額な年棒をもらっているプロ野球選手たちからすれば、オリンピックに参加したことの代償は、本人の記録の面や所属球団の戦力が落ちるなどのデメリットは大きいものがあるだろう。

銀メダルを取って各選手に与えられる報奨金は100万円程度と聞いているが、彼らにとってはタダも同然だろう。


■五輪の意義

なぜオリンピックで各国が報奨金を出すのかといえば、それだけオリンピックが国威発揚の場となってしまっているというのもあるだろう。

だが、クーベルタン男爵曰く「参加することに意義がある」のだから、お金目当てでオリンピックに出たがるのは、スポーツマンシップに反するということは言えるだろう。

ビジネス目的だったら、もっと他にそういう場があるだろう。


だが、本当の意味でのアマチュアの人々にとっては、オリンピックに参加するために仕事を休んだり出費がかさんだりして、それでまったく無報酬だとしたらやりきれないものがあるだろう。

だから、この問題には簡単には結論が出せない。


■付記(2004/09/14)

今日の朝日新聞夕刊によると、室伏選手のもとに金メダルが届いたそうだ。

メダルの授与式は24日のスーパー陸上の2004ヨコハマで行われるとのこと。

とりあえず一段落。だが、ドーピングをやらない選手がバカを見るという状態は、早いところなくなってほしいものだ。


【参考サイト】

・アヌシュが金メダル返還へ 論争避けるためと代理人

・「第3回:どうやって強くなるの?」

・韓国の強化プログラム

※以上、参照したページは全て消えている。