2022/11/24

【IT】元SEが考える~無人販売店で続発する窃盗犯罪~なぜ起きるのか?防止対策は?

 


最近、無人販売店の窃盗事件が多発していてニュースで報道されることが増えてきたが、なぜ増えているのか?またどのようにすれば防げるのかを、ソフトウエア開発暦25年の元SEとして考えてみた。


◆窃盗事件が多発

このところ、無人販売店・無人販売所・無人店舗で商品を持ち去る事件が全国で相次ぎ、物議を醸している。

9月末には新潟市にある無人販売所で冷凍餃子を盗んだとして、55歳の無職の男が逮捕された。


防犯カメラには、不審な動きを見せる男が料金箱に現金を入れようとするが、手をよく見ると現金はない映像が録画されていた。

この店舗では8月にも今回の容疑者とみられる男に複数回、餃子が盗まれていた。


相次ぐ盗難被害に、ネット上では以下のような声が上がっている。


「たかが1000円程度で捕まるって、マジでダサいよな。親きょうだいや親戚中にバレてめちゃ恥ずかしいと思う」


「そもそも無人販売ってパクられるに決まってるじゃん…スキがありすぎる」


「人件費削減のためだろうけど、無駄に犯罪者を量産するだけ。そろそろ止めた方がいいと思う」


流通ジャーナリストは、こう語る。

「無人販売店での窃盗が相次ぐ理由は、円安・物価高で庶民の生活が苦しくなったからでしょう。店側も資本が無いため、できるだけコストをかけたくないでしょうが、簡単に商品を持ち出せるシステム自体にも問題があるといっていいでしょうね。かつて、牛丼チェーンの『すき家』がコスト低減のために夜間に従業員をワンオペ就業させ、強盗事件が相次ぎ物議を醸しました。批判が相次いだため、ワンオペは解消されたかのように思えましたが、いつの間にか復活。今年1月に名古屋の店舗で、アルバイトの女性店員がワンオペ中に倒れ、誰にも発見されないまま亡くなっていた事が明らかになりました。〝コスパ〟という言葉が持て囃され、給料が上がらないまま物価高に突入しているのですから、窃盗・経費削減が続出するのも仕方ないことです」


最近急に増えてきただけあって、システム的にまだまだこなれていない部分が多そうだ。



◆【事例】大阪の餃子販売店

以下に、最近の無人店舗での窃盗例をいくつか紹介する。

まず、関西テレビ「報道ランナー」(2022年10月26日放送)で紹介された事例。


2022年10月、大阪府守口市の餃子販売店「業餃業」で窃盗事件があり、一部始終を防犯カメラが捉えていた。

帽子を目深にかぶった男が入店すると、冷凍庫の中にある商品を次々とポリ袋に入れていく。


料金投入口へ向かい、財布を取り出すが、中は空に見えて、支払いをせずに店を出た。


店は10月11日から売上金の計算が合わないことから、防犯カメラを確認したところ犯行が発覚した。

過去の映像をしらみつぶしに確認すると、この男が毎日あわせて10回、商品を盗んでいたことがわかり、被害額は約5万円にのぼる。


店側は4日間、張り込みを続け、10月21日に男が再び商品を盗んだところを取り押さえ、警察が窃盗の疑いで40代の男を逮捕した。

従業員が男を確保した時、男は「食べるものに困っていた」などと話していた。



◆【事例】大田区のラーメン店

2022年10月20日、東京・大田区にある無人販売所に短髪の男が来店した。

ここは全国の有名店の冷凍ラーメンが買えるという店。


男が手に取ったのはラーメンや餃子、合わせて4パック合計代金は4,000円だが、料金箱に代金を入れずに店から出ていく。


店の外に出た瞬間、男は張り込んでいた数人の警察官に取り囲まれ、現行犯逮捕された。

この40代の男は店で19回も盗みを繰り返す連続ラーメン泥棒として、警察からマークされていたのだ。


男は、9月下旬から毎日のように来店し盗みを繰り返していた。

10月15日から10月20日日までは6日連続で来ていた。


防犯カメラは、男が白いTシャツにベージュのズボンという同じような服装で、何度も犯行に及ぶ様子をとらえていた。

被害額は6万3000円だった。


これだけ同じ店で繰り返し窃盗を犯せば、張り込みをされるなどで逮捕される事態になるとは誰もが想像がつくのに、よほど頭が足りない人間なのだろう。



◆【事例】大阪市の雑貨店

次は、大阪市にある雑貨を扱う無人販売店の事例。

11月7日午前10時ごろ、黄色のダウンジャケットを着た人物が、買い物かごを片手に店内を回り始めた。


商品をかごの中へ入れ、会計は自分で計算して、お金は集金箱に入れるシステムになっている。

だが、会計の場所で、選んだ商品を次々とエコバッグに詰め込み、躊躇することなく金を払わずに出て行った。

入店からわずか6分ほどだった。

盗まれたのは、ポーチや弁当箱など合計8点で、被害額は2200円。

店の関係者:「憤りとともに驚きがあった。ほんの2200円のために自分の人生を棒に振るというか


◆【事例】柏市の冷凍ラーメン

2022年11月23日、千葉県柏市にある無人販売所から冷凍ラーメンなどを盗んだ疑いで、オレンジ色のダウンジャケットを着た男が現行犯逮捕された。

この無人販売所では商品が盗まれる被害が相次いでおり、防犯カメラには17日と19日にもオレンジ色のダウンジャケットを着た男が映っていた。

店から相談を受けた警察が数日前から張り込んでいた。

そして11/23、店を出た直後に、張り込み中の警察官に逮捕された。

逮捕されたのは、自称・流山市の無職・外山和也(とやまかずや)容疑者(23)

外山容疑者は冷凍ラーメンなど17点、1万7,000円相当を盗んだ疑いがある。

外山容疑者は、毎回オレンジ色のダウンジャケットという目立つ格好で3回、同じような時間帯に来店した。

動機について「無職で金がなく、腹が減ったので盗みました」と話した。


この男も、わざわざ捕まりたいためにやっているのかと思うほどに頭が足りないようだ。

もっとも、生きるかどうかの瀬戸際に立たされるほどに金がなく空腹だったのかもしれないが。



◆なぜ盗られるのか?

このように、今年に入って無人販売店での窃盗事件が頻発しているのは、なぜだろうか?

理由としては、以下のようなことが考えられる。


・コロナ渦の影響で、以前になかった店舗の開店が急に増えている。

・盗む方も、コロナ禍で収入が減ったといった理由で、食う物にも困って窃盗を行うケースが多い。


では、無人販売店では、なぜこれ程までに多く盗まれてしまうのだろうか。

以下に、考えられる理由を挙げてみる。


・コロナ渦や人手不足の理由で開店するが、盗難対策などが不十分。

・日本人の「性善説」「正常性バイアス」で、窃盗されないだろうとの思い込み。

・コロナ禍や人手不足などで無人販売店を思いつくが、多くの場合は窃盗などの防犯対策を十分に行っていないのではないか。

・窃盗など様々な状況を想定したシミュレーションが決定的に不足している。


すべての店舗ではないだろうが、コロナ禍など切羽詰まった理由によって、準備不足で開店してしまう店も多いのではないだろうか。


◆海外の事情

では、海外の場合はどうなのだろうか?

日本のように無人販売店があるのか?

あるとして、日本のような窃盗事件は頻繁に起きるのだろうか?


ネット上で調べてみると、まず無人販売店というものの存在を知らず、日本で急増していることを驚く人々が多い。

だが、さらに調べてみると、海外に無人販売所が全く存在しないわけではないようだ。


米国をはじめ世界各地にも無人販売所があるが、知らない人も多いように、あまり一般的な存在ではないようだ。

あるいは、海外にもあると言っている多くのケースは、ミネラルウォーターなど安い商品だけを扱う店が多いようだ。


◆罪の重さは?

では、無人販売店で窃盗を犯して捕まると、どのくらいの量刑が待ち受けているのだろうか。

以下に、弁護士サイトの情報を参考に、まとめてみる。


無人販売店での窃盗は、通常は窃盗罪となることが多い。

窃盗罪の法定刑は10年以下の懲役または50万円以下の罰金となっている。

だが、初犯であれば起訴されたとしても、ほとんどの場合は略式手続きで罰金刑となる。


初犯の場合,被害者と示談を成立させることができれば、起訴猶予の不起訴処分となる場合が多いという。


だが、以上の事で安心して、どうせ捕まっても初犯ならば重い罪にはならないと考えない方が良い。

捕まれば前科がつくだけでなく、逮捕場面をテレビニュースで報道されれば顔が日本中に晒される可能性があり、多くの日本人が一番避けたい思う事態になってしまうのだ。


ネット上で面が割れれば、どこかのブログなどでも顔写真が使われ、たちまちネット中に拡散される。

本名と顔が世間に晒されれば、これは好ましくない事態ではあるが、家族が攻撃されたりイジメに遭うことも珍しくない。


自分の就職もままならず、改名したり整形手術をしたくなるかもしれない。

文字通り、「一生を棒に振る」事態になる可能性もあるのだ。




◆窃盗防止策

では、すでに無人販売店を開業しているか、または開業を検討している人々にとって、窃盗を防止するためには、どのようなことを行えば良いのだろうか。

以下に、実際の具体策を挙げて考えてみたい。


◎防犯カメラ

これは当たり前すぎて、防犯カメラを設置していない店は殆ど無いのではないか。

もし設置していない無人販売店があれば、あまりにも無謀なことだ。


日本防犯設備協会の調査では、防犯カメラの設置で犯罪件数が約10%減少したという。

防犯カメラなど個人の住宅にも設置しているのだから、それさえも導入する経費をケチるならば、無人販売店など最初から考えない方が良いだろう。


ちなみに、うちの玄関に設置している防犯カメラは、夜間は人感センサーでライトが灯る。

それだけでも、見張られていると思い、悪いことを考えている人間は立ち去るだろう。


ちょうどこの記事を書いている今日11/25はAmazonでブラックフライデーが始まり、防犯カメラも対象商品が色々とあるようだ。

以下に、対象商品の例を示す。

この記事では、ブラックフライデー対象商品があれば優先的に紹介する。


●【Amazon Alexa 認定取得】 TP-Link ネットワークWi-Fiカメラ ペットカメラ フルHD 屋内カメラ 夜間撮影 相互音声会話 動作検知 スマホ通知 Tapo C200 3年保証


このブランドはうちでも愛用していて、評判が良いメーカーだ。


だが、ほとんどの無人店舗で防犯カメラを設置していても、それでも窃盗事件が絶えないのが実情だ。


(一社)全国防犯住宅推進機構トータルセキュリティアドバイザーの山口由衣さんは、「犯罪者が一番気にしているのは人の目。比較的多数の方から見られていることを意識させると抑止効果につながる」と話す。

そして、「従業員が防犯カメラの映像をリアルタイムで見ていることを示すだけでも有効」と語る。


◎店外から見えやすく

人に見られている可能性がある場所では、犯罪が減る。
その意味では、以下のような対策も有効だろう。

・外から店内が見えるガラス張り仕様にする。
・人通りの多い場所に店舗を構える。



それでも気にしない窃盗犯も中にはいるかもしれないが、まったく対策しないよりは良いだろう。


◎自動音声

これは通常の店舗でも採用していて、たとえばうちの近所の西友の2階だけで、ある場所を通ると人感センサーで「いらっしゃいませ」と音声が流れる。

1階の食品売り場は人通りが多く店員も多いが、店員が少ない2階だけで、万引きを行おうとする人間への心理的抑止策となっているのだろう。


これだけでも、どこかで見られているかもしれないと思って万引きを躊躇する人間もいるかもしれない。


下記のAmazonの商品は、人感センサーによって「いらっしゃいませ」などの音声が流れる。

下記のように自分で録音できる製品では、ロボット的な口調ではなく、なるべく実際にどこかから人間が監視しているのではないかと思わせるようなリアルな口調にすることが重要だろう。


●Waytronic PIR 赤外線モーションセンサー 音響プレーヤー ラウドスピーカー 録音可能なオーディオアラーム モーション検出器付き ドアグレーター ゲストエントリー アラート 販売広告


◎キャッシュレスで清算する

現金を使わずに、電子マネーやSuicaなどで精算するようなシステムを導入する。

ただし、これでは現金でしか買えない人は買えなくなるというデメリットがあるので、導入は中々ハードルが高いだろう。


◎ロッカー販売所

たとえば農家の無人販売所などで、農作物をロッカーに収めて販売しているところもある。

初期費用がかかるデメリットはあるが、窃盗被害が激減することが予想される。

ただし、ロッカーに入るサイズの商品だけを扱うことになるという制限はあるだろう。




◎料金箱に工夫

これはAERAの記事で紹介されていたケースだが、思わず笑ってしまった。

冷凍餃子直売所を全国に設置するのは「餃子の雪松」は、2018年9月に1号店をオープンして以降急拡大して、関東・中部地方を中心に140店舗以上を展開する。


当初、心配だったのは商品が盗難に遭うことで、そこで料金箱にひと工夫をした。


「料金箱を神社のお賽銭入れみたいにしています。ちょっとした遊び心なんですが、これで悪いことができないのではないかな、と思ったからです」



昔はよく、民家の塀に立小便されたくないときに、鳥居の絵を描いていたが、その発想に似ている。



◆IT的アイデア

私は過去に25年間SEをやっていて、お客様から様々なニーズを持ち込まれるが、それに対して解決策を検討することになる。

そのような経験をもとに、短時間でだが、思いついたアイデアを書いておく。


今すぐには難しいだろうが、このようなシステムを取り入れれば窃盗は減るだろうということや、将来的に世の中がこうなるのではないかということを挙げる。


◎料金を入れない客に

料金を入れない人間に対して、自動判断して以下のような音声を送出する。


・「警察ですが、お金を払ってませんね」

・サイレンを鳴らして「窃盗事件発生。住所は…」


◎スキャン方式

スーパーの自動レジ式に、バーコードで商品をスキャンして支払う形式にする。

スキャンしないで商品を持ち出すと警報が鳴る。


◎自動清算

顧客が商品を取った時点で、自動判断して清算を行う。

くら寿司では、それに近い方式を導入している。


◎顔写真

入店時に自動で顔写真を撮影する。

もし顔を隠していればドアが開かず、窃盗暦ありも同様になる。

または、同時に名前を言ってもらい、たとえデタラメでもその後に窃盗を働けば声紋が絶対的証拠となる。


◆最後に

以上の無人店舗の盗難対策は、アイデアは当然金はかかるが、政府が資金を助成してくれるようになれば実現の可能性が増すのではないか。

現在の自民党政権は弱者のことを考えていなくて期待できないが、個人的には将来の政権交代を密かに期待している。


全体的に、元SEの私が考えるのは、やはり「頭を使う」ことが最も重要だろうということ。

上で書いたように、本当に頭が良い窃盗犯など、ほとんどいないようだ。

犯罪者よりも賢くなり、頭を使うことが最も重要ではないかと思えてくるのだ。