2022/12/05

【W杯】日本は「技」では負けたが「ハート」では優勝~ファンのゴミ拾いを世界が称賛

 


サッカーFIFAワールドカップ決勝トーナメント1回戦で、日本はクロアチアに延長戦からの最後のPK戦で惜敗してしまったが、海外では技術面で辛辣な報道があるものの、サポーターたちのゴミ拾いなどで、まるで優勝したチームであるかのように日本は称賛されている。


◆決勝トーナメント1回戦

サッカーのカタール・ワールドカップ、12月5日(日本時間6日)、決勝トーナメント1回戦でのこと。

前半43分にFW前田大然のゴールで日本は先制した。

だが、後半10分にFWイバン・ペリシッチの一撃で同点とされる。


その後は一進一退の攻防が続き、延長戦でも1-1で決着はつかずPK戦へ。

PKを蹴った4人のうち、南野拓実、三笘薫、吉田麻也が失敗し、3対1で敗れた。

このため、史上初の8強はならず、16強で敗退する結果となった。


PK先攻の日本は、1人目の南野と2人目の三笘が立て続けにGKリヴァコヴィッチに止められた。

クロアチアは3人目のマルコ・リヴァヤが左ポストに当てて外した。

日本の3人目、FW浅野拓磨は初めて成功した。


だが、日本4人目の吉田麻也のシュートがブロックされ失敗。

クロアチア4人目のマリオ・パシャリッチがボールをネットに沈めて、勝利が決まった。


PKを外した3人の選手たちは、涙を流した。


下記のYouTube動画で、PKを含めたクロアチア戦のハイライトを見ることができる。


◆PKが酷評される

英国『BBC』の解説者2人が勝負の行方を決したPK戦の不出来を指摘している。

BBCの2人の解説者は、以下のような意見を述べている。


シアラー氏:

彼らはPKを蹴りにいくとき、あまりにも淡白だった。ボールを強く蹴り込めたり、狙い通りにいった選手がいたのかわからない。ボールを置いて、コースを決め、思い切って蹴るものだ」


ウィリアムズ氏:

「あのPK戦では日本に信念が欠け、クロアチアのような自信がないように感じた。前半が非常に良かったからタフで、残念だ。今大会を通じてもずっと素晴らしい存在だったしね」と評した。



これは日本のスポーツ全体に言えることで、イザという時になると本来の力を発揮できない。

緊張しやすかったり、日の丸を背負ったりしてプレッシャーがかかりすぎる。


◆今後の課題

ただ、今回はそのような要因よりも、GKにコースを読まれていたことが大きいだろう。


PKというのは、技術力よりも「読み」の勝負と言える。

GKの読みさえ外せれば、子供が蹴るようなゆるゆるキックでも入ることもある。

もっと「オカルト能力」がある選手がいれば、違っていたかもしれないが。


試合後のインタビューで、森保監督自身も日本のPK技術の問題点を認めて、以下のように語った。


「これまでも、育成年代(の指導者)も含めて色んな経験させていただいた。ボールを強く、狙ったところに決めていくことにおいては、日本と欧州であったり、世界のトップを走るチームと差があるなと感じてきていました。今日の試合に関しては、相手GKは本当に素晴らしかった。もっと強く狙ったところに蹴れるから、駆け引きができる。今後日本サッカーのポイントとしていかなければいけない




いずれにしても、今後の日本サッカーの大きな課題の一つに、「PKを疎かにしないで練習に励む」ことがあるだろう。


それでも、森保監督は選手の自主性を重視し、このPKも志願者を募った結果として決まったものだった。

テレビの解説者が語っていたが、PKというと尻込みする選手がいる中で、「勇気」がある選手たちだったということは評価されるべきだろう。


◆サッカー界の神の名言

ネット上では、かつてサッカー界の伝説的な存在だった元イタリア代表FWロベルト・バッジョ(1967/02/18-)の名言が引用されている。

バッジョは元イタリア代表で、現役時代のポジションはフォワードだった。


サッカーファンの間で、「サッカー史上最高の選手は誰?」という話題になる時に、常に10本の指に数えられる伝説的な選手だった。



ここで、バッジョの伝説的スーパーゴールの一つの動画を紹介する。

1994年W杯アメリカ大会決勝トーナメント1回戦の対ナイジェリア戦。

0–1で迎えた終了間際、イタリア敗退と思われた後半残り2分、仲間のパスからのインサイドキックで、ボールはナイジェリアDFの踵をかすめてゴール吸い込まれた。



そのバッジョが、PKに関する名言を残している。


「PKを外すことができるのは、PKを蹴る勇気を持った者だけだ」



今回のワールドカップでは、森保監督は選手の自主性を重んじたが、たとえ失敗しても、名乗り出た選手たちの意気込みと勇気は称えるべきではないか。

また、この対戦では、日本が力不足というのもあるが、クロアチアのGKがすごすぎたということも言えるだろう。


◆世界が称えた

日本のPKがお粗末と酷評されたものの、海外の報道ではポジティブな評価も多かった。


イタリア紙「コリエレ・デロ・スポルト」は「サムライブルーが全世界に感動を与えた」と称えた。


米国ニューヨーク・タイムズ紙は、「これほど大会を盛り上げ活気づかせたチームはなかった」と評価し、ドイツやスペインを破った予想以上の活躍を称えた。

ただし、最後のクロアチア戦については定石通りで「ルーティンのようにも感じられた」と指摘した。


日本に敗れたスペインのスペイン通信(EFE)は、「今回のW杯で日本にはったりはなかった」と戦いぶりを称賛し、「自らの長所と相手の短所をしっかり把握して改めて一致団結してよく動いた」と評価した。



だが、今回のW杯で世界が日本を称えたのは、サッカープレイの内容だけではなかった。

日本サポーターたちのゴミ拾いは、世界中から称賛を浴びた。


だが、実はその点では今回の大会に始まったのではなく、2014年・2018年にも世界から称賛されていたのだ。

以下に、2014年以降の海外の報道を紹介する。



◆2014年大会

2014年大会は、2014年6月12日~7月13日に、ブラジルで開催された。

イタリアのアルベルト・ザッケローニ監督の下で行われ、日本はグループCのコロンビア戦で敗れ、敗退した。


カナダのグローバルテレビジョンネットワークのニュース・時事部門Blobal Newsは、日本のファンは試合中は世界で最も元気で、試合後は礼儀正しいと紹介した。

開幕戦のコートジボワール戦で負けたが、ファンは失望で肩をすくめてスタジアム内で後片付けをしたことは、ホストを尊重し、環境を保護するという日本の価値観に根ざした行為だと絶賛した。




◆2018年大会

2018 FIFAワールドカップは、2018年6月14日~7月15日にロシアで開催された。

東ヨーロッパでは初の開催となった。


英国BBCニュースは、試合終了後の日本のサポーターの行動について書いていた。


「持参した大きなゴミ袋を持ったファンは列を行進してゴミを拾い、見つけたときと同じようにきれいに会場を後にした」

「『サムライブルー』のサポーターは、礼儀正しさに徹することに失敗したことがない」



下記のYouTube動画では、日本がベルギー戦で2-3で敗れた後のサポーターたちのゴミ拾い場面を紹介している。



◆2022年大会

今回の2022年大会のゴミ拾いなどについては、このブログの11/23の「【W杯】もう一つの「ドーハの奇跡」日本がドイツに勝利&日本人ファンたちのゴミ拾い行為に世界がWサプライズ」と題した記事で紹介している。



◆いただけない点も

ただ、日本のサッカーファンの行動は、カタールを離れて日本を見ると、いただけないと思う点もあった。


12/02のスペイン戦では、ドーハではサポーターたちがゴミ拾いする中を、渋谷では飲んだくれた人々も含めて大騒ぎの末に、ゴミを散らかしたままで帰って行った。


この渋谷の様子は、海外では報道されなかったかもしれないが、どうしてもカタールのサポーターたちと比べてしまうところだ。



◆日本人と森保監督の美徳

上記の11/23の記事でも書いたが、日本人は個人主義的側面が強い欧米人に比べると「個よりも全体」の意識が強く、また礼儀正しさはワールドカップを離れても海外から称えられることが多い。


特に日本を離れて海外へ行った場合、人々は「Japanese」として見ているわけで、その点は意識してふるまうことが大切だろう。


森保監督の采配と態度も、世界のサッカーファンから称賛された。

監督はクロアチア戦の敗戦の後で、日本のサポーターたちに向かって深々と90度のお辞儀をした。


さらに、胸に手を当てて感謝の意を表した。


FIFA公式インスタグラムは、これらの写真を紹介し、「日本代表とファンに対して胸が張り裂けるような思いです。W杯に足跡を残してくれてありがとうございました」と感謝の念を示した。


海外ファンからは、「日本にリスペクト」「悲しがらなくていいよ」「よくやったぜ」「素晴らしい仕事ぶりだった」「最高のサポーターだった」「日本代表お疲れ様でした!」「素晴らしいチーム」と尊敬の言葉が送られた。



4年後にまた森保監督のもとで出場するかどうかわからないが、まだ引退する年齢ではないので、また采配を振るってもらいたいところだ。



※「2022年 カタール・ワールドカップ 選手名鑑&GUIDE BOOK」(サッカーマガジン2022年11月号増刊)